2014年 10月 10日
内村航平 - 2014年世界選手権:個人総合の演技構成 |
UCHIMURA Kohei (JPN)
2014 Worlds Nanning (CHN) AA Routine Guide
内村航平の2014年世界選手権・南寧大会:個人総合の演技構成です。
#1 ゆか FX
D:6.6
E:9.166
Score:15.766
2013年はゆかの構成を落としていた内村だが、今年は久々に新月面を復活させてDスコアを6.6としている。なんと全ての着地を止めるという驚異的な実施を見せて絶好のスタートを切る。
#2 あん馬 PH
D:6.2
E:8.933
Score:15.133
あん馬は2013年から変わらない抑えめの構成。ウ・グォニアンで少し揺れた以外は安定した実施を見せ、小気味よくフィニッシュの倒立下りを決める。
#3 つり輪 SR
D:6.4
E:8.600
Score:15.000
つり輪はDスコアを上げてきた。最初にけ上がりからの中水平を行い、いつもの後ろ振り上がり中水平はヤマワキの後に入れている。しかし、やはり中水平2つは苦しいか、2回目は少し脚が下がってしまった。最後の新月面はこれまたピタリと決める。
#4 跳馬 VT
跳馬はヨー2で完璧な着地を決める。これは本人も相当嬉しかったようで、満面の笑みと力強いガッツポーズが出る。
#5 平行棒 PB
D:6.5
E:8.700
Score:15.200
ヒーリーの前に肘が緩むなど少し疲れが出たか、予選では屈身だったベーレもかかえ込みにしている。平行棒は構成を少し変えており、2013年から取り入れたマクーツやヒーリーはそのままだが、棒下ひねり倒立やいわゆる車輪ライヘルトを再び使っている。Dスコアを維持しながら負担が少しでも軽くなる構成をいろいろ試しているようにも見える。この構成も、入り技がいつもの腕支持カット(B)ではなく、モリスエ(D)も抜いているためA難度技が1つカウントされているが、Dスコアは2013年の個人総合よりも高くなっている。
#6 鉄棒 HB
D:6.9
E:8.333
Score:15.233
鉄棒は2013年と同じ構成。カッシーナとコールマンは近めの実施になり、バーを掴むときとその後の車輪で肘の曲がりが見られる。アドラー1回ひねりも角度減点を取られているものと思われるが、振り戻らないことを優先しているのかもしれない。着地はわずかに跳ねて手を回してしまい、一瞬だけ悔しそうな表情を見せる。
Total D:38.6
Total Score:91.965
Rank:1st
平行棒でベーレをかかえ込みにしているため予定のTotal Dは38.7であったと思われます。全体的に演技構成を落とした2013年と比べ、ゆかやつり輪で難度を上げていますが、平行棒の演技にも見られるように、6種目を戦う中で実施を犠牲にしないことはもちろん、身体への負担を抑えた無理のない構成を実に入念に考えているようにも思えます。これは何より2020年の東京オリンピックまでを見据えてのことかもしれません。
今年も内村は序盤からぶっちぎりの展開を見せ、世界選手権5連覇、オリンピックと合わせて6連覇という偉業を達成しました。この絶対王者内村の存在はスペシャリスト志向であった世界の体操の流れを明らかに変えています。各国のオールラウンダーのレベルは年々上がっており、今回は4位までが90点台というレベルの高い戦い。2011年は2位との差が3.101にもなりましたが、今年は1.492とまだまだ大差とは言えかなり縮まっています。Total Dで内村を上回る選手もどんどん現れており、今後も個人総合の戦いから目が離せません。
2014 Worlds Nanning (CHN) AA Routine Guide
内村航平の2014年世界選手権・南寧大会:個人総合の演技構成です。
#1 ゆか FX
1. | 後方宙返り3/2ひねり | Back 3/2 | C | III | |
---|---|---|---|---|---|
2. | ~前方宙返り5/2ひねり | + Front 5/2 | E | II | (CV:0.1) |
3. | 前方宙返り1回ひねり | Front 1/1 | C | II | |
4. | ~前方宙返り2回ひねり | + Front 2/1 | D | II | (CV:0.1) |
5. | 後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり | Double Back 2/1 | E | III | |
6. | 後方宙返り5/2ひねり | Back 5/2 | D | III | |
7. | ~前方宙返り3/2ひねり | + Front 3/2 | C | II | (CV:0.1) |
8. | フェドルチェンコ | Fedorchenko | C | I | |
9. | トーマス | Thomas | D | IV | |
10. | 後方宙返り3回ひねり | Back 3/1 | D | III |
D:6.6
E:9.166
Score:15.766
2013年はゆかの構成を落としていた内村だが、今年は久々に新月面を復活させてDスコアを6.6としている。なんと全ての着地を止めるという驚異的な実施を見せて絶好のスタートを切る。
#2 あん馬 PH
1. | 逆交差倒立 | Back Scissor to Hdst | D | I |
---|---|---|---|---|
2. | 横向き旋回 | Circle | A | II |
3. | 一把手上縦向き旋回 | Pommel Loop | B | II |
4. | Eフロップ | 4 Flops | E | IV |
5. | Dコンバイン | 2 Flops + R180 | D | IV |
6. | ロス | Russian Travel 3/3 360 | D | IV |
7. | ウ・グォニアン | Russian Travel 3/3 720 | E | IV |
8. | マジャール | Magyar | D | III |
9. | シバド | Sivado | D | III |
10. | DSA倒立3/3移動下り | DSA to Hdst Travel 3/3 | D | V |
D:6.2
E:8.933
Score:15.133
あん馬は2013年から変わらない抑えめの構成。ウ・グォニアンで少し揺れた以外は安定した実施を見せ、小気味よくフィニッシュの倒立下りを決める。
#3 つり輪 SR
1. | 中水平支持 | Maltese | D | IV |
---|---|---|---|---|
2. | アザリアン | Back Roll to Cross | D | IV |
3. | ヤマワキ | Yamawaki | C | I |
4. | 後ろ振り上がり中水平支持 | Back Uprise to Maltese | E | III |
5. | 後ろ振り上がり十字倒立 | Back Uprise to Inv-Cross | D | III |
6. | 後ろ振り上がり倒立 | Back Uprise to Hdst | C | II |
7. | 屈身ヤマワキ | Yamawaki Pk | D | I |
8. | ホンマ十字懸垂 | Whippet to Cross | D | III |
9. | ほん転逆上がり倒立 | Felge to Hdst | C | II |
10. | 後方かかえ込み2回宙返り2回ひねり下り | Double Back 2/1 | E | V |
D:6.4
E:8.600
Score:15.000
つり輪はDスコアを上げてきた。最初にけ上がりからの中水平を行い、いつもの後ろ振り上がり中水平はヤマワキの後に入れている。しかし、やはり中水平2つは苦しいか、2回目は少し脚が下がってしまった。最後の新月面はこれまたピタリと決める。
#4 跳馬 VT
D | E | Pen | Score | ||
ヨー2 | Hdsp Front Lay 5/2 | 6.0 | 9.633 | 15.633 |
跳馬はヨー2で完璧な着地を決める。これは本人も相当嬉しかったようで、満面の笑みと力強いガッツポーズが出る。
#5 平行棒 PB
1. | 前振り上がり | Front Uprise | A | II |
---|---|---|---|---|
2. | マクーツ | Makuts | E | I |
3. | ヒーリー | Healy | D | I |
4. | ドミトリエンコ | Dimitrenko | E | II |
5. | 棒下宙返りひねり倒立 | Basket 1/2 to Hdst | E | IV |
6. | 棒下宙返り倒立 | Basket to Hdst | D | IV |
7. | ベーレ | Belle | D | III |
8. | 懸垂前振り後方かかえ込み宙返りひねり腕支持 | Giant Back Toss 1/2 | D | III |
9. | 前方開脚5/4宙返り腕支持 | 5/4 Front Strd | D | I |
10. | 後方屈身2回宙返り下り | Double Back Pk | D | V |
D:6.5
E:8.700
Score:15.200
ヒーリーの前に肘が緩むなど少し疲れが出たか、予選では屈身だったベーレもかかえ込みにしている。平行棒は構成を少し変えており、2013年から取り入れたマクーツやヒーリーはそのままだが、棒下ひねり倒立やいわゆる車輪ライヘルトを再び使っている。Dスコアを維持しながら負担が少しでも軽くなる構成をいろいろ試しているようにも見える。この構成も、入り技がいつもの腕支持カット(B)ではなく、モリスエ(D)も抜いているためA難度技が1つカウントされているが、Dスコアは2013年の個人総合よりも高くなっている。
#6 鉄棒 HB
1. | カッシーナ | Cassina | G | II | |
---|---|---|---|---|---|
2. | シュタルダーとび3/2ひねり片大逆手 | Stalder Hop 3/2 to MG | D | III | |
3. | アドラーひねり | Jam 1/2 | D | IV | |
4. | ~コールマン | + Kolman | F | II | (CV:0.1) |
5. | 後方とび車輪3/2ひねり | Hop 3/2 to MG | C | I | |
6. | アドラー1回ひねり片逆手 | Jam 1/1 to MG | D | IV | |
7. | ~ヤマワキ | + Yamawaki | D | II | (CV:0.1) |
8. | エンドー | Endo | B | III | |
9. | 後方とび車輪1回ひねり | Hop 1/1 | C | I | |
10. | 後方伸身2回宙返り2回ひねり下り | Double Back Lay 2/1 | E | V |
D:6.9
E:8.333
Score:15.233
鉄棒は2013年と同じ構成。カッシーナとコールマンは近めの実施になり、バーを掴むときとその後の車輪で肘の曲がりが見られる。アドラー1回ひねりも角度減点を取られているものと思われるが、振り戻らないことを優先しているのかもしれない。着地はわずかに跳ねて手を回してしまい、一瞬だけ悔しそうな表情を見せる。
Total D:38.6
Total Score:91.965
Rank:1st
平行棒でベーレをかかえ込みにしているため予定のTotal Dは38.7であったと思われます。全体的に演技構成を落とした2013年と比べ、ゆかやつり輪で難度を上げていますが、平行棒の演技にも見られるように、6種目を戦う中で実施を犠牲にしないことはもちろん、身体への負担を抑えた無理のない構成を実に入念に考えているようにも思えます。これは何より2020年の東京オリンピックまでを見据えてのことかもしれません。
今年も内村は序盤からぶっちぎりの展開を見せ、世界選手権5連覇、オリンピックと合わせて6連覇という偉業を達成しました。この絶対王者内村の存在はスペシャリスト志向であった世界の体操の流れを明らかに変えています。各国のオールラウンダーのレベルは年々上がっており、今回は4位までが90点台というレベルの高い戦い。2011年は2位との差が3.101にもなりましたが、今年は1.492とまだまだ大差とは言えかなり縮まっています。Total Dで内村を上回る選手もどんどん現れており、今後も個人総合の戦いから目が離せません。
by kaki_aqr
| 2014-10-10 18:00
| 内村航平 UCHIMURA
|
Comments(4)
Commented
by
かみん
at 2014-10-10 23:26
x
内村選手見事でした。
あん馬の降りで少しヒヤっとしたのですが、あれは特にEスコアには影響しないのですかね。倒立にあげるときに思った以上にスムーズにあがりすぎ、ひねり移動で勢いがつきすぎて少しバランスを崩したのかと思いました。
平行棒はなぜ構成をころころ変えるのか不思議に思っていたのですが、Ka.kiさんの分析になるほどです。
個人総合のレベルはあがってますよね。中国も以前と比べると総合に力を入れ始め、なおかつ美しさもきっちり重視しているように見受けられ、今大会もEスコアが厳しめで、とみると、北京の頃あたりよりも日本の体操が流れを作っていると感じます。
内村選手の功績は偉大ですね。
あん馬の降りで少しヒヤっとしたのですが、あれは特にEスコアには影響しないのですかね。倒立にあげるときに思った以上にスムーズにあがりすぎ、ひねり移動で勢いがつきすぎて少しバランスを崩したのかと思いました。
平行棒はなぜ構成をころころ変えるのか不思議に思っていたのですが、Ka.kiさんの分析になるほどです。
個人総合のレベルはあがってますよね。中国も以前と比べると総合に力を入れ始め、なおかつ美しさもきっちり重視しているように見受けられ、今大会もEスコアが厳しめで、とみると、北京の頃あたりよりも日本の体操が流れを作っていると感じます。
内村選手の功績は偉大ですね。
素晴らしかったですね。あん馬の下りは確かにいつもより勢いが付いているようですが、特に問題ないように見えます。平行棒にはついては本当のところはどうなんでしょうね。
中国が個人総合に力を入れているのはオリンピックが5人制になったこともあるでしょうし、Eスコア重視も選手の負担や安全面を考慮してのものかもしれません。ただやはり内村は空前絶後のチャンピオンで、世界中の体操選手の憧れですから、いろんなところに影響を与えているのは間違いないと思います。
中国が個人総合に力を入れているのはオリンピックが5人制になったこともあるでしょうし、Eスコア重視も選手の負担や安全面を考慮してのものかもしれません。ただやはり内村は空前絶後のチャンピオンで、世界中の体操選手の憧れですから、いろんなところに影響を与えているのは間違いないと思います。
今日の中部読売新聞のスポーツ欄における富田洋之さんのコラムで衝撃的なことが書かれていました。
オリンピック派遣人数を更に減らし4人制にする話しがFIGの中で持ち上がっているとのことです。体操未開発国にも出場機会を広げることが目的です。
故にオールラウンダー育成の方向性は間違っていないと結んでいますが、そうなると代表を勝ち取るのがより熾烈になってきますね。
オリンピック派遣人数を更に減らし4人制にする話しがFIGの中で持ち上がっているとのことです。体操未開発国にも出場機会を広げることが目的です。
故にオールラウンダー育成の方向性は間違っていないと結んでいますが、そうなると代表を勝ち取るのがより熾烈になってきますね。
5人にしたばかりなのにまた減らすんですかね。4-3-3とかなんか面白みがなさそうですね。