鉄棒の珍しい連続技 |
2012年まで、鉄棒の組合せ加点は、
バー上の技 手放し技
D以上 + D以上 = 0.2 (逆も可)
手放し技 手放し技
C + D以上 = 0.1 (逆も可)
D以上 + D以上 = 0.2
となっており、アドラー系の技などから手放し技への組合せが流行しました。ほとんど規定演技のようになってしまったアドラー1回ひねり~ヤマワキ(D/E+D)の他、アドラーひねり~伸身トカチェフ(D+D)や伸身トカチェフ~リバルコ(D+D)がよく見られる組合せとして挙げられます。また、鄒凱ら中国勢はリバルコやエンドー1回ひねり大逆手(D)からバラバノフ(D)やポゴレロフ(E)のようなイエーガー系の技につなげて価値点を稼いでいました。ここではバー上の技と手放し技の組合せのうち、これら以外のちょっと珍しいものを集めてみました。
ヤマワキ~リバルコ(D+D) Yamawaki + Rybalko
スペインのセルジオ・ムニョスの実施。自身の名が付くムニョス/ポッツォ(ヤマワキひねり)をこの前に行っており、ヤマワキ系が得意な様子。
コバチ~リバルコ(D+D) Kovacs + Rybalko
D+Dだが意外に見かけない組合せ。平行棒と鉄棒の得意なフランス、ヤン・クシェラの2009年の実施。
ペガン~リバルコ(E+D) Pegan + Rybalko
本家本元であるスロベニアのアルヤズ・ペガンによる組合せ。安定した実施で長年に渡り鉄棒のファイナリストに名を連ねた。
コールマン~リバルコ(F+D) Kolman + Rybalko
リバルコなど大逆手系の実施が巧い星陽輔の組合せ。最近では田中佑典も行っている。
エンドー1回ひねり大逆手~ゲイロード(D+D) Endo 1/1 to El + Gaylord
ギリシャのヴラシオス・マラスの実施。D+Dという難度以上の難しさに見える独創的な組合せ。
シュタルダーとび1回ひねり大逆手~バラバノフ(D+D) Stalder Hop 1/1 to El + Balabanov
中国の紀練深の実施。シュタルダーとび1回ひねり大逆手とイエーガー系の手放し技は、ともに中国勢が得意としている技。
アドラーひねり~コバチ(D+D) Jam 1/2 + Kovacs
田中佑典やマルセル・ニューエンらドイツの選手も行っているが、植松鉱治の実施を紹介。2010年の世界選手権・ロッテルダム大会:団体決勝での演技。
アドラーひねり~モズニク(D+E) Jam 1/2 + Moznik
ロシアのエミン・ガリボフの実施。中国の張成龍も行っているほか、開脚モズニクとの組合せ(D+D)で行っている選手も少なくない。
アドラーひねり~デフ(D+E) Jam 1/2 + Deff
オーストラリアのフィリップ・リッツォの実施。2006年のルール改訂前から行っており、動画も2003年の世界選手権・アナハイム大会のもの。その昔、藤田健一も行っていた。
アドラーひねり~ゲイロード2(D+E) Jam 1/2 + Gaylord2
ロンドンオリンピック金メダリスト、オランダのユプケ・ゾンダーランドの実施。2010年まではかかえ込みゲイロード2との組合せ(D+D)で行っていた。
アドラーひねり~コールマン(D+F) Jam 1/2 + Kolman
馬場亮輔の高難度の組合せ。最近では齊藤優佑も行っている。
アドラーひねり~リューキン(D+F) Jam 1/2 + Liukin
ご存知、内村航平がロンドンオリンピックのために用意した秘密兵器。2012年の全日本体操やNHK杯で成功させたが、ロンドンでは種目別決勝に進出できなかったため不発に終わった。
2006年に組合せ加点が現在のルールになって以来、この6年でバー上の技と手放し技の組合せは出尽くした感があります。アドラー系からの手放し技は車輪の勢いがつけられないにも関わらずついにはコールマンやリューキンにつなげるにまで至りました。一方、腰の曲がった怪しげなヤマワキや伸身トカチェフが横行するという弊害も起こっています。また、連続技にこだわるあまり、逆に演技全体の流れが悪くなっているように感じられる構成も見受けられます。
そして何よりも中国勢がこの組合せ加点で価値点を上げまくっているからでしょう。個人的には加点の回数制限あたりが来るのではないかと思っていましたが、2013年のルール改訂では、
バー上の技 手放し技
D以上 + D以上 = 0.1 (逆も可)
手放し技 手放し技
C + C以上 = 0.1 (逆も可)
D以上 + D以上 = 0.2
という変更がなされました。バー上の技との組合せは全て0.1の加点となり、今後は手放し技の連続が主流になってくるものと思われます。ゾンダーランドのような演技構成が有利となるわけですが、手放し技を強引に連続するような大味な演技が増えてしまうような気もします。
具体的な組合せとしてはコバチ系の連続の他、古くから行われてきたトカチェフ系の連続が復権しそう。伸身トカチェフ~モズニク(D+E)あたりなんて流行りそうです。さらにつなげてイエーガー系からギンガー系とか。個人的にはモズニクのようなキャッチするときにひねるタイプの手放し技はインチキくさくてあまり好きではないのですが。