エクササイズ・オブ・ザ・イヤー2016 |
毎年、年の瀬に選んでいる「今年の演技」です。オリンピックイヤーの2016年の演技はこれしかないでしょう。リオデジャネイロオリンピック:個人総合における内村航平の鉄棒です。
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1. | 屈身コバチ | Kovacs Pk | E | II | |
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2. | カッシーナ | Cassina | G | II | |
3. | シュタルダーとび3/2ひねり片大逆手 | Stalder Hop 3/2 to MG | D | III | |
4. | アドラーひねり | Jam 1/2 | D | IV | |
5. | ~コールマン | + Kolman | F | II | (CV:0.1) |
6. | アドラー1回ひねり片逆手 | Jam 1/1 to MG | D | IV | |
7. | ~ヤマワキ | + Yamawaki | D | II | (CV:0.1) |
8. | エンドー | Endo | B | III | |
9. | 後方とび車輪1回ひねり | Hop 1/1 | C | I | |
10. | 後方伸身2回宙返り2回ひねり下り | Double Back Lay 2/1 | E | V |
D:7.1
E:8.700
Score:15.800
感動の団体決勝の演技からとも考えましたが、一つに絞り切れなかったこともあり、この「王者の着地」を選びました。リオの内村の個人総合については当時の記事で書き尽くした感がありますが、ここではこのオリンピックに向けての鉄棒の演技構成という観点で書いてみたいと思います。
ロンドンオリンピックが終わりルールも変わった2013年、内村の鉄棒はD:6.9の構成から始まりました。終末技をフェドルチェンコ(F)にしたD:7.0や、世界選手権の種目別決勝でカッシーナ~コールマンというとんでもない連続を入れたD:7.2を行ったこともありましたが、オリンピックを見据え高難度と安定性を両立させるために選んだのは、かつて使っていた屈身コバチを再び演技に取り入れることでした。
この構成の原型は2014年の豊田国際で実施されたD:7.2です。久しぶりに内村の世界一美しいコバチが見られファンは驚喜しました。このときはコールマンの後にC難度のホップターンひねりを入れていましたが、翌2015年からはこれを抜いたD:7.1の構成としてオリンピックに狙いを定めたのです。
内村の鉄棒はヤマワキの後にB難度のエンドーが入るため、ホップターンひねりを抜いてもDスコアは0.1しか下がりません。実施減点を伴いやすいひねり技を抜き、DスコアとEスコアの合計を最も高くするための選択でした。
この構成で2015年の世界選手権:種目別で優勝。リオでは予選で落下、団体決勝で振り戻りのミスがありましたが、この個人総合ではエンドーで腰を痛めながらも内村らしい見事な着地を決めました。間違いなく内村の最高の鉄棒の一つに数えられる演技だと思います。
ちなみに個人的には、当時本家本元:エンドーの記事が爆発的に参照されたことも印象に残っています。せっかく検索して見てもらったのに、参考にならない記事で申し訳ないなぁと思ったものです。
過去のエクササイズ・オブ・ザ・イヤー
・エクササイズ・オブ・ザ・イヤー2015
・エクササイズ・オブ・ザ・イヤー2014
・エクササイズ・オブ・ザ・イヤー2013
2013年のルール改訂とともに始まったブログが、まさか4年も続くとは思っていませんでした。いつもご覧になってくださった皆さま、本当にありがとうございました。体操競技にとってオリンピックイヤーは大きな節目です。2017年からは何か新しいことも始めてみたいと思っていますが、とにかくも皆さまどうぞよいお年をお迎えください。
とはいえ、こちらのように密度の濃いサイトの運営は、往々にしてホストの方の努力と献身が無酸素運動状態(笑)になるため、三年程度で活動が休止されるという例を過去に多く見てきました。新しい活動にもチャレンジされるとのことですが読み手としても悦ばしいことで、ぜひその時その時の関心に従って、息を継ぎながら御自身が末長く楽しまれる活動を勝手ながらお祈り申し上げます。そしてでき得れば、2020年を迎える頃にその御高説を拝見できる機会が存在していることを。
そして内村選手のこの圧巻の1分55秒はリアルタイムで見ていて絶句するしかないものでした。今見ると細かい減点要素が目につきますが、種目別決勝のゾンダーランドがやはりコバチでバーをつかんでいながらスイングに入る所で滑り落ちる失敗をしていますし、内村選手が近い距離でつかむ判断をしたのは正しかったのでしょうね。素晴らしい演技をリアルタイムで見られた身の幸運を実感します。
過分なお言葉をいただき恐縮です。新しいサイトの方でもマイペースでやっていきたいと思っています。引き続きご覧いただければ幸いです。今年もよろしくお願いします。
この内村の鉄棒は、全く仰るとおりで減点箇所がないわけではありません。もっといい実施だって過去にはあったと思います。しかし、オリンピックという最高の舞台で、そして満身創痍の体を信じがたい集中力で操ってみせた最高の演技だったと思います。決めるべきところは絶対に決めるあたり、恐ろしいまでに個人総合の戦い方を熟知しているとも思いました。