2015年 12月 03日
跳馬のムーンサルト |
Full Twisting Double Back on VT
いつになく跳馬の記事が続いていますが、今回は跳馬のムーンサルトについて。
ムーンサルト(月面宙返り)は「後方2回宙返り1回ひねり」の通称です。塚原光男により鉄棒の終末技として発表され、その後はゆか、つり輪、平行棒にも応用されるなど今日の体操に欠かせない技となっていますが、跳馬のムーンサルトというとどういうことになるのでしょう。
跳馬で後方宙返りをする跳越としてはツカハラとびとユルチェンコとびがあります。これらを2回宙返りにしたのがヨー(D:5.6)とメリサニディス(D:5.6)なので、これに1回ひねりを加えれば跳馬のムーンサルトということになりそうです。
まずはヨー1回ひねりですが、実は下の図は採点規則にリ・セグァン(D:6.4)として載っているものです。リ・セグァンの日本語表記は「ツカハラとび後方かかえ込み宙返り1回ひねり」となっておりまさに跳馬のムーンサルトそのものです。しかし、現在リ・セグァンを跳ぶ選手は本家を始めとしていずれもカサマツとびを2回宙返りにした技として跳んでいます。ツカハラとび1回ひねりとカサマツとびは同一枠と見なされるため、2回宙返りにしても同様に扱われるわけです。
ただ、カサマツとびのリ・セグァンの動きは「1/4ひねり+前方宙返り1/2ひねり+後方宙返り」という感じでムーンサルトというにはちょっと違うように見えます。やはりツカハラとびで後方2回宙返り1回ひねりをしてこそと思うわけですが、そんな跳び方をしている人はいるのでしょうか。
実はトマ・ブエル(フランス)の練習動画があります。ブエルは右ロンダートの左ひねりなので自ずとツカハラとびになるのですが、動画ではそこから1回ひねっています。まさに跳馬のムーンサルト、あるいは「ツカハラとびのツカハラ」とも言えるかもしれません。
ヨー1回ひねり Tsukahara Double 1/1
次はメリサニディス1回ひねり。こちらは後転とびから入るため、ツカハラとびのような1/4ひねりもなく、完全に後方2回宙返り1回ひねりのムーンサルトになります。Dスコアは6.4でしょう。ドミニク・カニンガム(イギリス)らの練習動画があります。他にエディ・ペネフ(アメリカ)、平良匠(東海大学)。
メリサニディス1回ひねり Yurchenko Double 1/1
それにしてもすごい跳越ですね。実際に発表する選手が現れてほしいですが、ヨー1回ひねりはどのみちリ・セグァンとして扱われるため望み薄かもしれません。メリサニディス1回ひねりはかなりかっこいいのでぜひ期待したいところです。
他に跳馬で後方宙返りをする跳越となると、グループVの「ロンダート、1回ひねり後転とび」の技群がありますが、ただの2回宙返りですら発表されていないのでさすがに無理でしょうかね…。
いつになく跳馬の記事が続いていますが、今回は跳馬のムーンサルトについて。
ムーンサルト(月面宙返り)は「後方2回宙返り1回ひねり」の通称です。塚原光男により鉄棒の終末技として発表され、その後はゆか、つり輪、平行棒にも応用されるなど今日の体操に欠かせない技となっていますが、跳馬のムーンサルトというとどういうことになるのでしょう。
跳馬で後方宙返りをする跳越としてはツカハラとびとユルチェンコとびがあります。これらを2回宙返りにしたのがヨー(D:5.6)とメリサニディス(D:5.6)なので、これに1回ひねりを加えれば跳馬のムーンサルトということになりそうです。
まずはヨー1回ひねりですが、実は下の図は採点規則にリ・セグァン(D:6.4)として載っているものです。リ・セグァンの日本語表記は「ツカハラとび後方かかえ込み宙返り1回ひねり」となっておりまさに跳馬のムーンサルトそのものです。しかし、現在リ・セグァンを跳ぶ選手は本家を始めとしていずれもカサマツとびを2回宙返りにした技として跳んでいます。ツカハラとび1回ひねりとカサマツとびは同一枠と見なされるため、2回宙返りにしても同様に扱われるわけです。
ただ、カサマツとびのリ・セグァンの動きは「1/4ひねり+前方宙返り1/2ひねり+後方宙返り」という感じでムーンサルトというにはちょっと違うように見えます。やはりツカハラとびで後方2回宙返り1回ひねりをしてこそと思うわけですが、そんな跳び方をしている人はいるのでしょうか。
実はトマ・ブエル(フランス)の練習動画があります。ブエルは右ロンダートの左ひねりなので自ずとツカハラとびになるのですが、動画ではそこから1回ひねっています。まさに跳馬のムーンサルト、あるいは「ツカハラとびのツカハラ」とも言えるかもしれません。
ヨー1回ひねり Tsukahara Double 1/1
次はメリサニディス1回ひねり。こちらは後転とびから入るため、ツカハラとびのような1/4ひねりもなく、完全に後方2回宙返り1回ひねりのムーンサルトになります。Dスコアは6.4でしょう。ドミニク・カニンガム(イギリス)らの練習動画があります。他にエディ・ペネフ(アメリカ)、平良匠(東海大学)。
メリサニディス1回ひねり Yurchenko Double 1/1
それにしてもすごい跳越ですね。実際に発表する選手が現れてほしいですが、ヨー1回ひねりはどのみちリ・セグァンとして扱われるため望み薄かもしれません。メリサニディス1回ひねりはかなりかっこいいのでぜひ期待したいところです。
他に跳馬で後方宙返りをする跳越となると、グループVの「ロンダート、1回ひねり後転とび」の技群がありますが、ただの2回宙返りですら発表されていないのでさすがに無理でしょうかね…。
by kaki_aqr
| 2015-12-03 23:00
| 跳馬 VT
|
Comments(4)
Commented
by
伸身ローチェ
at 2015-12-06 02:28
x
メリサニディス1回ひねりとても迫力がありますね。
ところでグループVの跳躍についてですが、みなさんはどう思っていらっしゃるのでしょうか。
短い第一局面で1回ひねりを入れるのは半ひねりより数段難しいと思うのですがDスコアの加点は半ひねりの単純に倍です。難度を考えると低いのかもしれないと思ってしまいます。なにより一つ前の記事でも取り上げられた「跳馬という競技の進む方向」はこのような跳躍なのでしょうか。少し疑問に思います。
ところでグループVの跳躍についてですが、みなさんはどう思っていらっしゃるのでしょうか。
短い第一局面で1回ひねりを入れるのは半ひねりより数段難しいと思うのですがDスコアの加点は半ひねりの単純に倍です。難度を考えると低いのかもしれないと思ってしまいます。なにより一つ前の記事でも取り上げられた「跳馬という競技の進む方向」はこのような跳躍なのでしょうか。少し疑問に思います。
グループVはですねぇ…これもずっと考えてるんですよ(笑)。現実としては3/4ひねりで跳ばれていること、類似する後方系より0.4アップという難度設定、そして何より跳馬という種目の方向性との関わりなど、いろいろあります。いずれはと思いつつ、これもなかなか記事にできていないテーマの一つになっています(そんなのばかりですが)。
Commented
by
わい
at 2017-06-11 13:10
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私もリ・セグァンの跳躍を解説者が「ムーンサルト」と解説したのを不信に思っていました。
あれは「笠松跳び二回宙返り」と呼ぶべきでしょう。
余談ですが私的には「前転跳び宙返り半ひねり後方宙返り」堀出跳び二回宙返りを見たいものですが。未だ未見です。
「ジマーマン」と名前が既についていますね。
あれは「笠松跳び二回宙返り」と呼ぶべきでしょう。
余談ですが私的には「前転跳び宙返り半ひねり後方宙返り」堀出跳び二回宙返りを見たいものですが。未だ未見です。
「ジマーマン」と名前が既についていますね。
同一枠として扱われる技なので致し方ないところではあると思います。
堀出選手はかつての跳馬のスペシャリストですかね。ジマーマンは不思議な技ですが、ロシアのゴロツツコフ選手がそれらしい捌きで跳んでいました。
堀出選手はかつての跳馬のスペシャリストですかね。ジマーマンは不思議な技ですが、ロシアのゴロツツコフ選手がそれらしい捌きで跳んでいました。