2013年 12月 10日
本家本元:コバチ |
Originators : Kovacs
今日の鉄棒における手放し技の潮流の一つがここから始まりました。言わずと知れたコバチ(バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り懸垂)です。
発表者はハンガリーのコバチ・ペーテル。ハンガリーの名前は日本と同じく姓名の順です。1979年のヨーロッパ選手権・エッセン大会で発表。動画はその時のものと思われます。実況の「ストロウマン宙返り」とは「バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り下り」という終末技のこと。コバチでバーを掴まず下りるとストロウマンになりますが、現在の採点規則にはその名前は載っていないようです。というか、これ日本で放送されていたんでしょうか。むしろそれが驚きなんですが(笑)。
それまでの手放し技はマルケロフやトカチェフのようなとび越し系か、イエーガーやギンガーのような宙返り系が基本でした。コバチはそのどちらとも違う宙返りとび越し系。対となる前方宙返りのゲイロード(1981年発表)とともに革新的な手放し技の誕生だったと言っていいでしょう。
1993年から2000年までE難度。現在はD難度です。特に1990年代半ば以降は主流の手放し技となり、多くの発展技が生まれました。かかえ込みだった姿勢は屈身(E)、伸身(E)へと改良され、また、1回ひねりを加えたコールマン(F)、さらにそれを伸身にしたカッシーナ(G)へと進化しています。名前は付いていませんが、伸身コバチを初めて実施したのは旧東ドイツのエンリコ・アンブロス。発表は1989年とされていますが、動画は1992年のもののようです。
というわけでコバチはこれまで数多くの使い手がいましたが、世界で最も高く美しい理想的な実施をするのは言うまでもなく内村航平でしょう。完全なかかえ込み姿勢から素早く体を開いてバーをキャッチするあの瞬間がたまりません。完璧な位置で決まるとバーを掴むときや、その後の振り上がりで肘が曲がることも全くなく、まるで車輪の一部であるかのようにスムーズです。すでに紹介したものの中では2009年の世界選手権:個人総合のものが見事。こちら2011年のジャパンカップ:個人総合での実施も秀逸ではないかと思います。
最近の内村の鉄棒は、より高難度のカッシーナなどを取り入れた構成になっており、コバチが見られなくなってしまったのは残念な限りです。今後も、連続技として取り入れる可能性はあるかもしれませんが、単発での実施は望み薄と思われ、日本中いや世界中の体操ファンが禁断症状を引き起こしています(笑)。
今日の鉄棒における手放し技の潮流の一つがここから始まりました。言わずと知れたコバチ(バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り懸垂)です。
発表者はハンガリーのコバチ・ペーテル。ハンガリーの名前は日本と同じく姓名の順です。1979年のヨーロッパ選手権・エッセン大会で発表。動画はその時のものと思われます。実況の「ストロウマン宙返り」とは「バーを越えながら、後方かかえ込み2回宙返り下り」という終末技のこと。コバチでバーを掴まず下りるとストロウマンになりますが、現在の採点規則にはその名前は載っていないようです。というか、これ日本で放送されていたんでしょうか。むしろそれが驚きなんですが(笑)。
それまでの手放し技はマルケロフやトカチェフのようなとび越し系か、イエーガーやギンガーのような宙返り系が基本でした。コバチはそのどちらとも違う宙返りとび越し系。対となる前方宙返りのゲイロード(1981年発表)とともに革新的な手放し技の誕生だったと言っていいでしょう。
1993年から2000年までE難度。現在はD難度です。特に1990年代半ば以降は主流の手放し技となり、多くの発展技が生まれました。かかえ込みだった姿勢は屈身(E)、伸身(E)へと改良され、また、1回ひねりを加えたコールマン(F)、さらにそれを伸身にしたカッシーナ(G)へと進化しています。名前は付いていませんが、伸身コバチを初めて実施したのは旧東ドイツのエンリコ・アンブロス。発表は1989年とされていますが、動画は1992年のもののようです。
というわけでコバチはこれまで数多くの使い手がいましたが、世界で最も高く美しい理想的な実施をするのは言うまでもなく内村航平でしょう。完全なかかえ込み姿勢から素早く体を開いてバーをキャッチするあの瞬間がたまりません。完璧な位置で決まるとバーを掴むときや、その後の振り上がりで肘が曲がることも全くなく、まるで車輪の一部であるかのようにスムーズです。すでに紹介したものの中では2009年の世界選手権:個人総合のものが見事。こちら2011年のジャパンカップ:個人総合での実施も秀逸ではないかと思います。
最近の内村の鉄棒は、より高難度のカッシーナなどを取り入れた構成になっており、コバチが見られなくなってしまったのは残念な限りです。今後も、連続技として取り入れる可能性はあるかもしれませんが、単発での実施は望み薄と思われ、日本中いや世界中の体操ファンが禁断症状を引き起こしています(笑)。
by kaki_aqr
| 2013-12-10 21:00
| 本家本元 Originators
|
Comments(13)
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名無しのSさん
at 2013-12-10 22:19
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コバチのほうが発表が先なんですね。
てっきりゲイロードが先だと思っていました。
昔は難度表ではコバチのほうが難度が高かったようですが、実際やるのはどちらのほうが難しいんでしょうね?
ただゲイロードのほうが完璧な実施をするのは難しい気がします。
てっきりゲイロードが先だと思っていました。
昔は難度表ではコバチのほうが難度が高かったようですが、実際やるのはどちらのほうが難しいんでしょうね?
ただゲイロードのほうが完璧な実施をするのは難しい気がします。
どうもそのようなんですよ。ただ、先に流行ったのはゲイロードでしたね。1993年にE難度ができたときにコバチだけEになって、流れが移った感じですかね。
前方系のゲイロードのほうが難しいと思うんですが、バーを見て持ちやすいということもあるみたいですね。まぁこれだけ実施する人の数に違いがあると、一概にどちらが難しいということもはっきり言えないかもしれません。
前方系のゲイロードのほうが難しいと思うんですが、バーを見て持ちやすいということもあるみたいですね。まぁこれだけ実施する人の数に違いがあると、一概にどちらが難しいということもはっきり言えないかもしれません。
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昔、体操少年
at 2013-12-11 12:05
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このヨーロッパ選手権の映像、確かN○Kで放送したと思います。見ました。
感想は「何てことを!」でした(笑)。
ゲイロード、ほんとに“アメリカ的”な技です。確かにコバチなどの後方宙返り系よりも、バーが早くから見える利点はあるのでしょうが、逆手でつかんでプロテの芯がきちんと入ってくれるかどうかが…。
後は、バーを越えるため、あふりを遅くするそのタイミングの問題があります。イェーガーからゲイロードに切り替えた池谷君が’92のバルセロナで、バーを越えられずに危うく、ということがありましたっけ…。
前宙系のあふりは高さを出そうとするとバーに極端に寄ってしまいます。東京のつり輪金の早田卓次先生がメキシコの代表を逃したのも、鉄棒の終末、前方屈伸宙返り1/2ひねりでバーに足を当てて落下したからです。早田フリークのボクは同じ技をやってましたが、バーに寄るのがイヤであふりを逃がしていました。高3になる春、早田先生のご指導を受ける機会があり、お聞きしたところ、開脚飛び越し下りのあふりとの区別がつかなくなってしまったと…。
感想は「何てことを!」でした(笑)。
ゲイロード、ほんとに“アメリカ的”な技です。確かにコバチなどの後方宙返り系よりも、バーが早くから見える利点はあるのでしょうが、逆手でつかんでプロテの芯がきちんと入ってくれるかどうかが…。
後は、バーを越えるため、あふりを遅くするそのタイミングの問題があります。イェーガーからゲイロードに切り替えた池谷君が’92のバルセロナで、バーを越えられずに危うく、ということがありましたっけ…。
前宙系のあふりは高さを出そうとするとバーに極端に寄ってしまいます。東京のつり輪金の早田卓次先生がメキシコの代表を逃したのも、鉄棒の終末、前方屈伸宙返り1/2ひねりでバーに足を当てて落下したからです。早田フリークのボクは同じ技をやってましたが、バーに寄るのがイヤであふりを逃がしていました。高3になる春、早田先生のご指導を受ける機会があり、お聞きしたところ、開脚飛び越し下りのあふりとの区別がつかなくなってしまったと…。
おぉ、そうなんですか。ヨーロッパ選手権を放送とか当時はすごいですね。
ゲイロードは前方系なのでやはりあふりや掴んでからの振り上がりが難しそうですね。そのあたりがコバチとの発展性の違いだったのでしょう。貴重なお話ありがとうございます!
ゲイロードは前方系なのでやはりあふりや掴んでからの振り上がりが難しそうですね。そのあたりがコバチとの発展性の違いだったのでしょう。貴重なお話ありがとうございます!
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伸身ローチェ
at 2013-12-12 23:04
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何度もスペルをみて思ってたんですが
やっぱり「コバックス」ともいうんですね
やっぱり「コバックス」ともいうんですね
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昔、体操少年
at 2013-12-13 11:01
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人名、日本では原語での読みにしてるんでしょうか?
ドイツのニューエンさんなんか、ベトナムの"グェン"さんでしょ?
"N+子音"で始まるのはアフリカ系で多く見られるんですけど、ボクが潜っていた研究室の留学生の場合は、"N"を発音しませんでした。
ですから、Nbombaで「ボンバ」と…。
ヨーロッパなんかはどうなんでしょうね。
’76のミュンヘンの際、加藤澤男さんは「ザワオ カトー」って呼ばれてました。ドイツ語では"S+母音"はザ行になるものですから…。
正直、「サ」と「ザ」のどっちでアナウンスするんだろうと、TV中継に耳をすませてましたっけ…。
ドイツのニューエンさんなんか、ベトナムの"グェン"さんでしょ?
"N+子音"で始まるのはアフリカ系で多く見られるんですけど、ボクが潜っていた研究室の留学生の場合は、"N"を発音しませんでした。
ですから、Nbombaで「ボンバ」と…。
ヨーロッパなんかはどうなんでしょうね。
’76のミュンヘンの際、加藤澤男さんは「ザワオ カトー」って呼ばれてました。ドイツ語では"S+母音"はザ行になるものですから…。
正直、「サ」と「ザ」のどっちでアナウンスするんだろうと、TV中継に耳をすませてましたっけ…。
日本においては、外国人の名前は現地読みするのが一般的な感じですね(中国人の名前はその限りではないですが)。ただ、当時はよく分からなかったので「コバックス」と呼んだのでしょう。日本語版採点規則の技名も基本的には現地読みだと思いますが、そうでないものもありますね。
一方、欧米では自国語の発音でそのまま呼ぶのが一般的みたいなので、Kovacsは英語圏では普通に「コバックス」なのかもしれません。だから「ザワオ・カトー」だったりするんでしょうね。
一方、欧米では自国語の発音でそのまま呼ぶのが一般的みたいなので、Kovacsは英語圏では普通に「コバックス」なのかもしれません。だから「ザワオ・カトー」だったりするんでしょうね。
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伸身ローチェ
at 2013-12-14 21:14
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いろいろと情報ありがとうございます。ヨーロッパ圏はだいたいアルファベット(もしくはみたいなの)を使うのに読み方が様々ですよね。バッハはワッハ立ったりするとか。コバチの例からいくとハンガリーはなかなか難しそうですね。
外国人の読みとか自分もそれほど分かっているわけではないので、あまり突き詰めずにほどほどでいこうと思っています(笑)。
ハンガリーの名前は日本と同じ姓名の順だったり、一筋縄ではいかないですね。そもそも世界からJapanと呼ばれているこの国が「日本」であるように、ハンガリーの人にとって自国は「マジャール」ですもんね。
ハンガリーの名前は日本と同じ姓名の順だったり、一筋縄ではいかないですね。そもそも世界からJapanと呼ばれているこの国が「日本」であるように、ハンガリーの人にとって自国は「マジャール」ですもんね。
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すいか
at 2016-09-27 23:26
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はじめまして。ちょっと興味ある話題でしたのでコメントさせていただきます。
「外国人の名前をどう読むか」ということに関しては、おおよそ全世界で、おおよそ共通する慣例があります。
それは「そのスペルを自国の言葉風に読む」というものです。
本稿のKovacs選手はアメリカでは「ピーター・コヴァックス」と読まれます。
加藤沢男(Sawao Kato)さんは、ドイツでは「ザヴァオ・カトー」と読まれることになるでしょうか。
体操ではありませんが、F1のドライバー、ミハエル・シューマッハは、英語でインタビューを受けるときは
インタビュアーから「マイケル」と呼ばれます。
日本と中国も同様で、こちらはさらに田中角栄が首相だったころに、日中国交正常化交渉にて
「お互いに、自国の言葉の発音で読むことにしよう」という政府間レベルの合意がなされています。
ですから、李寧は「リ・ニン」ではなく「り・ねい」、李小鵬は「リ・シャオペン」ではなく「り・しょうほう」と読まれるのが
日本では「正しい」正式の読み方ということになります。少なくともマスメディアはそう読んでるはずです。
もちろんそれは逆に、日本人名は、中国では「漢字を中国語風に読む」のが正式の読み方となるわけです。
日本と韓国/北朝鮮もかつては同様でしたが、確か全斗煥大統領の時代に、やはり日韓の政治的な交渉で
「自国語風ではなく、原語で読みあうことにしよう」という合意がなされています。
ですから、例えば金正日は、かつては「きん・せいにち」」と読まれていたんですが、
その合意後は「キム・ジョンイル」と読まれることになりました。
ですので、梁鶴善は「りょう・かくぜん」ではなく「ヤン・ハクソン」、李世光は「り・せこう」ではなく「リ・セグァン」と読まれるわけです。
体操競技では、技の名前は「原語」で読まれることが基本だと聞きますので、体操競技の実況では
「李小鵬(り・しょうほう)選手が、リ・シャオペンを飛びます」みたいな、ちょっと不思議なことになるわけですね。
「外国人の名前をどう読むか」ということに関しては、おおよそ全世界で、おおよそ共通する慣例があります。
それは「そのスペルを自国の言葉風に読む」というものです。
本稿のKovacs選手はアメリカでは「ピーター・コヴァックス」と読まれます。
加藤沢男(Sawao Kato)さんは、ドイツでは「ザヴァオ・カトー」と読まれることになるでしょうか。
体操ではありませんが、F1のドライバー、ミハエル・シューマッハは、英語でインタビューを受けるときは
インタビュアーから「マイケル」と呼ばれます。
日本と中国も同様で、こちらはさらに田中角栄が首相だったころに、日中国交正常化交渉にて
「お互いに、自国の言葉の発音で読むことにしよう」という政府間レベルの合意がなされています。
ですから、李寧は「リ・ニン」ではなく「り・ねい」、李小鵬は「リ・シャオペン」ではなく「り・しょうほう」と読まれるのが
日本では「正しい」正式の読み方ということになります。少なくともマスメディアはそう読んでるはずです。
もちろんそれは逆に、日本人名は、中国では「漢字を中国語風に読む」のが正式の読み方となるわけです。
日本と韓国/北朝鮮もかつては同様でしたが、確か全斗煥大統領の時代に、やはり日韓の政治的な交渉で
「自国語風ではなく、原語で読みあうことにしよう」という合意がなされています。
ですから、例えば金正日は、かつては「きん・せいにち」」と読まれていたんですが、
その合意後は「キム・ジョンイル」と読まれることになりました。
ですので、梁鶴善は「りょう・かくぜん」ではなく「ヤン・ハクソン」、李世光は「り・せこう」ではなく「リ・セグァン」と読まれるわけです。
体操競技では、技の名前は「原語」で読まれることが基本だと聞きますので、体操競技の実況では
「李小鵬(り・しょうほう)選手が、リ・シャオペンを飛びます」みたいな、ちょっと不思議なことになるわけですね。
はじめまして。コメントありがとうございます。
体操競技で最も有名なこの技が日本では「コバチ」と呼ばれているため、原語(その選手の国における読み)が基本みたいな感じになっていますね。とはいえ、ヴァン・ゲルダーはファン・ヘルダーでしょうし、ロシア系も軒並み英語読みで通っていますので、要するにめちゃくちゃだと思います。もちろんこのサイトもめちゃくちゃです(笑)。
中国系については、Code of Pointsは当然英語で書かれているので、
Li Xiaopeng→リ・シャオペン
となってしまいますね。
Li Xiaopeng→李小鵬→りしょうほう
と変換していくのはなかなか難しいのかなと思います。
体操競技で最も有名なこの技が日本では「コバチ」と呼ばれているため、原語(その選手の国における読み)が基本みたいな感じになっていますね。とはいえ、ヴァン・ゲルダーはファン・ヘルダーでしょうし、ロシア系も軒並み英語読みで通っていますので、要するにめちゃくちゃだと思います。もちろんこのサイトもめちゃくちゃです(笑)。
中国系については、Code of Pointsは当然英語で書かれているので、
Li Xiaopeng→リ・シャオペン
となってしまいますね。
Li Xiaopeng→李小鵬→りしょうほう
と変換していくのはなかなか難しいのかなと思います。
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わい
at 2020-06-12 02:31
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初めまして。
コバチは日本では当初ストロウマンと呼ばれていました。
78年の世界中選手権で初めて見た記憶があります。
それがいつの間にかコバチに。
私的にはストロウマンの方が。。
ひねりも何も無いストロウマンで驚いたのですが、今やカッシーナに宮地ですから。
近年、ついに伸身ゲイロードを実施した選手が出たとか。
夢の技と思われていた伸身ゲイロード一回ひねりの可能性が。
コバチは日本では当初ストロウマンと呼ばれていました。
78年の世界中選手権で初めて見た記憶があります。
それがいつの間にかコバチに。
私的にはストロウマンの方が。。
ひねりも何も無いストロウマンで驚いたのですが、今やカッシーナに宮地ですから。
近年、ついに伸身ゲイロードを実施した選手が出たとか。
夢の技と思われていた伸身ゲイロード一回ひねりの可能性が。
「中技のストロウマン宙返り」と呼ばれていたようですね。
動画は1979年ヨーロッパ選手権のものですが、1978年世界選手権でも実施していたのでしょうか?
動画は1979年ヨーロッパ選手権のものですが、1978年世界選手権でも実施していたのでしょうか?