あん馬の見方:4.旋回倒立技の格上げルール |
4. Value of Handstand Elements
「あん馬の見方」と題して以下の4回に分けて説明しています。
1.あん馬の基礎知識
2.技のグループ
3.フロップとコンバイン
4.旋回倒立技の格上げルール
第4回は旋回倒立技の格上げルールについて。終末技として最もよく行われていると思われるDSA倒立3/3移動下り(D)は、実は採点規則の難度表には載っていません。このような旋回から倒立に上げて移動やひねりを行う技は、特別な格上げルールにより難度が定められているからです。演技途中に行われる技と、終末技の2つに分けて説明していきます。
演技途中の旋回倒立技には次のような格上げルールがあります。
・シュテクリA(DSA)や下向き逆移動、旋回ひねりから続けた場合、1段階格上げ
・倒立から下ろして旋回に続けた場合、1段階格上げ
・3/3移動(270°ひねりながら)を行った場合、1段階格上げ
・360°以上の倒立ひねりを行い、下ろして片足振動技または交差技に続けた場合、1段階格上げ
・360°以上の倒立ひねりを行い、下ろして旋回に続けた場合、2段階格上げ(2番目の条件と合わせて計3段階の格上げ)
基本となる「旋回倒立下ろして開脚支持」はB難度なので、表にまとめると以下のようになります。
旋回倒立 | DSA倒立 等 | ||
下ろして開脚支持 | 移動、ひねりなし[1] | B | C |
---|---|---|---|
3/3移動 | C | D | |
360°ひねり | C | D | |
360°ひねり3/3移動 | D | E | |
下ろして旋回 | 移動、ひねりなし | C | D |
3/3移動 | D | E | |
360°ひねり | E | F | |
360°ひねり3/3移動 | F | G |
[1] 「移動、ひねりなし」とは、3/3に満たない移動、360°に満たないひねりを含みます。以下、同じです。
旋回からの倒立、シュテクリAまたは下向き逆移動からの倒立の見極めは慣れないと分かりにくいかもしれません。旋回からの倒立は、旋回の正面支持からそのまま倒立に上げます。シュテクリAや下向き逆移動からの倒立は、転向しながら倒立に上げていきます。図に表すと以下のようになります[2]。
[2] 説明の都合上、図は倒立までとなっていますが、ここから下ろして開脚支持または旋回、あるいは下り技に続けなければ一つの技として成立しないことに留意してください。あん馬において、倒立で完了する技はありません。
実際の演技を見てみましょう。まずは豪快な開脚旋回で名を馳せたアレクサンダー・アルティメフ(アメリカ)。2008年北京オリンピック:団体決勝での演技。旋回倒立1回ひねり下ろして旋回(E)を行っています。当時はD難度でした。
イタリアのアルベルト・ブスナリ。旋回倒立技を再び流行らせた張本人です(笑)。最高難度のDSA倒立1回ひねり3/3移動下ろして旋回(G)にはブスナリの名が付きます。続けて旋回倒立1回ひねり3/3移動下ろして旋回(F)を行っています。
終末技の旋回倒立技には次のような格上げルールがあります。
・シュテクリAや下向き逆移動、旋回ひねりから続けた場合、1段階格上げ
・3/3移動(270°ひねりながら)を行った場合、1段階格上げ
・450°以上の倒立ひねりを行った場合、1段階格上げ
終末技の基本となる「旋回倒立下り」もB難度なので、表にまとめると以下のようになります。
旋回倒立 | DSA倒立 等 | |
移動、ひねりなし | B | C |
---|---|---|
3/3移動 | C | D |
450°ひねり | C | D |
450°ひねり3/3移動 | D | E |
終末技は今日ではほとんどがシュテクリAや下向き逆移動から行われるため、3/3移動か450°ひねりが入ればD難度、両方入ればE難度と比較的分かりやすいと思います。ひねりが450°となっているのは、旋回や転向から倒立すると横向きの状態になっているためで、着地はあん馬に対して縦向きにならなくてはなりませんから、360°(1回ひねり)に加えてさらに90°のひねりが必要になるためです。
よく見られるDSA倒立3/3移動下り(D)。あん馬得意の小林研也の実施です。3/3移動は270°ひねりながら行わなくてはなりません。
冨田洋之の下向き逆移動倒立3/3移動下り(D)。まるで何か別の見えない力が作用しているかのような軽やかな実施です。
あん馬といえばこの人、ルーマニアのマリウス・ウルジカ。移動のないDSA倒立450°ひねり下り(D)です。馬端できれいなピルエット(倒立ひねり)を決めています。
DSA倒立450°ひねり3/3移動下り(E)を行う場合は、3/3移動している間のどこでひねってもいいことになっています。マックス・ウィットロック(イギリス)は馬端から馬端に移動した後、戻るようなかたちで合わせて450°をひねっています。
しかし、やはり一番かっこいいのは馬端から馬端へ3/3移動をしながらひねる捌き。ニコライ・クリュコフ(ロシア)のこの終末技はまさに芸術的というに相応しいものでした。最近ではベルキも上手く決めますね。実際にはあん部までに270°、さらに馬端までに360°ひねっているため、合わせて630°ひねっていることになります。
旋回からの倒立技で重要なのは、スイングの動きのまま倒立に上げること。途中での停滞や力を使ったような実施は減点となります。さすがに終末技の動画を紹介した5人はスムーズですが、ブスナリの旋回倒立はちょっと微妙ですね。最悪なのは倒立の上昇局面で一旦脚が下がってしまうことで、場合によっては技が認定されないこともあります。終末技のやり直しはできないので、Dスコア、Eスコアともに大きく減点されてしまうことになります。
演技途中の旋回倒立技は、2013年のルール改訂で「360°以上の倒立ひねりを行い、下ろして旋回に続けた場合」が難度格上げとなりました。このため、ブスナリが最高難度のG難度となっており、高難度技が少ないグループIIの扱いということもあって、今後はこの技に取り組む選手が増えてくるものと思われます。個人的には倒立はあん馬のメインの要素ではないと思うので、あまりこればっかりになってしまうのはどうかと思うのですが。強引に倒立に上げるような実施が横行しないことを願うばかりです。
これであん馬の大体のルールは掴むことができました。
>>個人的には倒立はあん馬のメインの要素ではないと思う
まさにその通りですよね。
それにアルティモフ選手のようなかっこいい実施ならともかく、ほとんどの選手の場合難度を上げるために仕方なく実施しているといった付け刃的実施に思えますし。
最後にあまり知名度はないかもしれませんが、あん馬ならこの人がおすすめという一人を思い出したので、ちょっと貼らせてもらいますね。
http://www.youtube.com/watch?v=aU1WrHxMd_Q
もしご存知だったらすみません。
長文失礼しました。
そう言っていただけると書いた甲斐があります。
そうですね。流れが途切れてしまうような感じもしますし。
アルティモフのような実施ならいいんですけどね。
ぺ・ギルスですね。北朝鮮はたまにこういうすごいスペシャリストを出しますね。
これは一段階格上げだけでいいと思う。
あと倒立技には制限数を加えることも。
最低二回までがいいんじゃないでしょうか?
ブスナリなんかは実施がぎこちないのに三回も実施しているので、見ていてモヤモヤしますし。
実質3回行ってるようなものですし。
ロシアン転向技も、終末技を含めて二回までにしてもいいかもしれない。
すごいのだと終末技も含めて、5回実施している人もいますし。
これだと一部の技ばかりに偏ってばかりで良くない気もしますしね。
あと倒立技は上げる際と下ろす際に停滞が見られればそれぞれ減点、3/3移動技は旋回移動技でもいい気がします。
コバチ系統の技の連続は確かにくどいですよね。これはトカチェフにも言えることだと思います。
回数制限については現実味を帯びてきているでしょうね。ブスナリ選手は明らかにやりすぎていると思います。個人的にはセアや終末を含めて2回までくらいでもいいのではないかと。とりあえず停滞や力の使用は厳しく減点して欲しいですね。
ロシアン転向は今でも終末を含めて2回までですね。ただ、コンバインや転向移動技(ウ・グォニアンなど)は除かれるのですが。終末含めて4つも入れていた2006年のセリグマンの構成とかがきっかけになっていると思います。
回数制限はコンバインや転向移動技も含めてのつもりでした。
言い方が悪かったですね。
ちなみにこれが下向き転向系の技を5回実施しているものですね。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=fFCnrT6upNs
ロス、トン・フェイ、ウ・グォニアン、馬端下向き1080°転向、ウ・グォニアン、馬端下向き1080°転向下りですね。
転向技が含まれないことがこういった演技を生み出したのでしょう。
転向移動技ですね。
間違えました。
1ポメル上でシュピンデル
これは僕も考えたことがあります。
たぶん難度をつけるとすると、E以上は確実。
馬背で行うよりも難しそうなのでFになる可能性もありそうですね。
あくまで推測ですが。
そういえばシュピンデルしながら縦移動なんて技がありますが、難度がEとありきたりなためか誰も実施しませんね。
ウグォ二アンとかより難しい気がするんですがねえ。
個人的にはFでもいい気がする。
360はF、720でG
これは面白いですね、発想としてはいいと思います。
ただシュピンデルの場合ロシアン旋回と違い、ひねり切るタイミングを見極めずらいので、どうなんだろう。
解説では「2旋回以内で一回ひねる」となっていますが、ひねりのタイミングが選手によって違ったりするんですよね。
なので720度ひねるとなるとちゃんと連続して実施している選手もいれば、一回一回止まって実施しているように見える選手も現れそうなので、そうならないように、ひねりの度数に応じて連続で実施しているように見えるように旋回の回数を制限する必要があると思います。
ただここら辺はちょっとあいまいになるかもしれないので、制限の作り方には慎重にならないといけないので難しいものがありますね。
なんか自分で書いててもよくわからない文章になってしまいましたが、要は「連続して実施しているように見える必要がある」ということですね。
名無しのSさんがおっしゃるように720度シュピンデルはちょっと判定が難しそうですね。以前のように1回の旋回で1回ひねりだったらまだ分かりやすいのですが。開脚で2回ひねったら見栄えはかなりしそうです。1ポメル上はすごく難しそうですね。怪我しそうです…。
あとのバリエーションは2ポメル上で支持しながら足を8の字に回すとかしか思いつきません...ほぼ力技ですが。
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||←ポメル
旋回?するという、ほとんど力技ですね捌きは倒立に近いかも
やっても認められるんだろうかコレ。
シュピンデルしながらマジャール移動、シバド移動とか。
もし認められればE以上は確実だと思います。
実施する選手が現れるかどうかは別ですが。
できるかどうかは別として、図が上手いです。両脚を入れた後、とびで倒立に近い正面支持になる…んでしょうか?
ウルジカがそんなことをやっていたような。
http://www.youtube.com/watch?v=aZ7y6qCgQ-E
当時はこのように技を複合させて難度を取ることができたようです(おかげで当時のあん馬はワケが分かりません)。
終末で馬端倒立1回ひねりがあるのでポメル上倒立1回ひねり降りなんてどうでしょう、よく交差倒立でポメル上倒立はやるわけですし。というかそれ以外でそんなことしないのか。
1ポメル上のピルエットはかなりかっこよさそうです。終末に限らずセア倒立でやってもいいかも。
次にあん馬に革命を起こすスペシャリストは誰に、もしくはいつになるんでしょう・・・待ちどおしい。
これ以外に分類できそうな技ってありますかね。
旋回倒立系ももっとスムーズな捌きが主流になって見違えるような演技が出てくるかもしれませんね。今は本家があの実施なので、あれでいいみたいな感じになってしまっていますが、上手い人がどんどん出てくれば変わってくる可能性もあります。
分類するとそんな感じですかね。これまで歴史的には、技の複合の廃止や組合せ加点の廃止があって、今は単独技をどう積み上げていくかになってしまっているわけですが、現状だと確かに手詰まり気味な感はありますね。
ブスナリ選手のあの実施はあれが精一杯なのか、3回上げることを意識しての体力、確実性を意識した捌きなのかどっちなんでしょうね。「ウィトロック式」のほうがミスはしやすくても疲れないような気がするんですが。
ちょっと考えてみたんですがもしかしたら協会の方は倒立技の規制をするのにブスナリ選手の進退をみてからにしようとしている、ってことはないですよね・・・よくよく考えると倒立技の規制で損するのはブスナリ選手だけなんでは、みんながみんな影響される床の宙返り転の規制とはわけが違うのでやりづらいとか。いや、やっぱりブスナリ選手にしか「できない」構成だから高得点は妥当と考えてるんでしょうね、・・・どうなんだろう?