あん馬の見方:2.技のグループ |
2.Element Groups
「あん馬の見方」と題して以下の4回に分けて説明しています。
1.あん馬の基礎知識
2.技のグループ
3.フロップとコンバイン
4.旋回倒立技の格上げルール
第2回はあん馬の技グループについて。各グループの説明とともに、トップ選手の演技でよく見られる代表的な技を挙げていきます。
あん馬の技グループは、
I 片足振動技と交差技 Scissors
II 旋回技、旋回ひねり技、倒立技 Circles
III 旋回移動技(横向き、縦向き) Travels
IV 転向技、フロップやコンバイン技 Kehr/Wende/Flops
V 終末技 Dismounts
となっています。
グループIは脚で馬体を挟むようにして振動させ、その脚を入れ替える交差技のグループです。交差から倒立に上げるいわゆるセア倒立はD難度で、グループIの技としては最高難度のためトップ選手のほとんどが実施してきます。セア倒立は現在4種類の技がありますが、正交差倒立と逆交差倒立がよく行われています。セア倒立をやらない選手はC難度の正交差横移動ひねり逆交差入れなどを入れてきます。B難度を満たせばよかった10点満点時代には正交差ひねり逆交差入れなどがよく行われていました。
正交差倒立 Front Scissor to Hdst
逆交差倒立 Back Scissor to Hdst
グループIIはあん馬の基本、旋回技です。旋回には横向き旋回と縦向き旋回、開脚旋回と閉脚旋回があり、組合わせると4種類の旋回があることになりますが、実質的には開脚旋回はほぼ横向き旋回なので、横向き旋回、縦向き旋回、開脚旋回の3種類と考えていいと思います。英語では横向き旋回をCircle、縦向き旋回をLoopといって区別します。開脚旋回はFlairといいます。よく見られる高難度技はD難度のマジャール・シュピンデル(縦向き旋回1回ひねり)。横向き旋回1回ひねりもD難度。ともに、2回以内の旋回で1回ひねりを行わなくてはなりません。D難度以上の技だけで10技揃えられるのは一握りのトップ選手だけなので、B難度の一把手上縦向き旋回などもよく見られます。2013年のルール改訂でブスナリ(下向き逆移動orDSA倒立3/3移動1回ひねり下ろして旋回)が転向技にも関わらずグループIIの扱いとなったため、今後はこの技で一気に難度を稼ぐ選手が増えてくるものと思われます。
マジャール・シュピンデル(縦向き旋回1回ひねり) Loop 1/1 Spindle
横向き旋回1回ひねり Flair 1/1 Spindle
グループIIIは旋回しながらの移動技。よく見られるのは何といっても縦向き旋回で馬端から馬端まで3/3移動するマジャール(縦向き前移動)(D)とシバド(縦向き後ろ移動)(D)。トップ選手のみならずほとんどの選手が演技に取り入れている技で、あん馬では最も分かりやすい技なのではないでしょうか。注意すべき点は前移動も後ろ移動もあん部馬背に着手しない1-2-4-5の移動ではD難度にならず、C難度になってしまうこと。D難度の条件は「1-2-4-5以外の3/3移動」となっており、あん部馬背に着手すれば問題なくD難度、あん部馬背に着手しなくても1-2-5のような移動をすればD難度となります。1/2移動や2/3移動はB難度になります。横向き旋回での移動技はあることはありますが、あまり見られません。
マジャール Magyar
シバド SIvado
グループIVは転向技。転向とは旋回と同じ方向へ支持部を回転させる運動のこと。つまり、どれだけ回っても体の向きが変わらない旋回と違い、旋回しながら(その方向へ)体の向きが変わっていくのが転向です[1]。基本となるのは上向き転向(リア)(A)、シュテクリA/B(B)、下向き逆移動(逆リア)(B)、把手上下向き転向(フクガ)(B)、ロシアン転向といった技。特にシュテクリA/Bはフロップやコンバインの構成技となるためあん馬を見る上で理解が欠かせませんが、これについては次の記事で説明します。ロシアン転向は正面支持のまま転向を続ける通称「パタパタ」ともいわれる技。馬端馬背で1080°(3周)回ればD難度、あん部馬背で1080°回ればE難度です。他によく見られる高難度技としてはロス(ロシアン360°転向移動)(D)やウ・グォニアン(ロシアン720°転向移動)(E)があります。いずれもロシアン転向しながら3/3移動する技で転向度数が異なるのですが、一見区別のしにくい技です。ウ・グォニアンはトップ選手のほとんどが取り入れていますが、バランスを崩しやすく落下のおそれの高い技でもあります。グループIVは高難度の技が多く、フロップやコンバインもグループIVの技として扱われるため、トップ選手の演技構成ではグループIVの技が4つ入ることが多くなります。
[1] シュピンデル(旋回ひねり)は旋回とは逆方向にひねるもので、体の向きは変わりますが転向とは異なります。
ロス Russian Travel 3/3 360
ウ・グォニアン Russian Travel 3/3 720
グループVは終末技。D難度以上が要求されているためDSA倒立3/3移動下り(D)がよく見られますが、トップ選手はさらにひねりを加えてE難度にしてきます。このあたりはあん馬特有の格上げルールがあるため次の次の記事で説明します。
DSA倒立3/3移動下り DSA to Hdst Travel 3/3