モリスエとベーレ |
体操競技を見始めて間もない人にとって、平行棒のモリスエ(D)とベーレ(D)は区別が付きにくい技なのではないでしょうか。アームモリスエとも呼ばれるドミトリエンコ(E)も含めて、技の違いを説明してみたいと思います。
3つの技の日本語名は、
・モリスエ | 後方棒上かかえ込み2回宙返り腕支持 |
・ドミトリエンコ | 前振り上がり後方かかえ込み2回宙返り腕支持 |
・ベーレ | 懸垂前振り後方かかえ込み2回宙返り腕支持 |
いずれも後方2回宙返りをして腕でバーを受ける技ですが、実は宙返りを行う前の過程に違いがあります。それぞれ、
・モリスエ | 支持から |
・ドミトリエンコ | 腕支持から |
・ベーレ | 懸垂から |
支持とは、手でバーを握って体を支えている(手より肩が上にある)状態です。腕支持は手ではなく上腕で体を支えます。懸垂は字のごとくバーにぶら下がっている状態のことをいいます[1]。
[1] 体力測定でやっていた「懸垂」は懸垂腕屈伸の略。つまり、バーにぶら下がって腕を曲げ伸ばしして体を引き上げる運動ということになります。
こんなことを文章で説明するより、図で表した方が早いですね。
モリスエ Morisue
倒立から振り下ろし、手で体を支える支持の状態から前に振って宙返りをします。
ドミトリエンコ Dimitrenko
倒立からひじを曲げて腕支持の状態になり、前に振り上がって宙返りをします。
ベーレ Belle
倒立から振り下ろし、バーにぶら下がる懸垂の状態を経て、つまり車輪の運動から宙返りをします。
実際の演技を見るとさらに分かりやすいでしょう。2011年の世界選手権・東京大会:予選での内村航平の演技です。動画はドミトリエンコから。続いてベーレ、前振りカット(B)を挟んでモリスエの順に全てかかえ込みで行っています。
モリスエやベーレでは、宙返りをして腕でバーを受けるときに体がしっかり伸びていなければなりません。不十分な実施は減点の対象となります。内村の実施はさすがにきれいですが、モリスエやベーレはバーを受けた後に必ず前振り上がりなどの動きを伴うため、減点が多くなりやすい技ともいわれています。
ちなみに、棒下宙返りから後方宙返りを行うというよく似た動きの技もあります。テハダ(D)といいますが、まず見かけることのない珍しい技。もっと難度が高くてもいいような気がします。
テハダ Tejada
平行棒の技グループは、
I 両棒での支持技 Support
II 腕支持振動技 Upper Arm
III 両棒・単棒での長懸垂振動技 Long Hang
IV 逆懸垂振動技 Underswing
V 終末技 Dismounts
となっており、モリスエ、ドミトリエンコ、ベーレ、テハダの4つの技はそのままグループI~IVに当てはまります。平行棒にはこのような、入り方によって異なる技になる例が多く、例えば、片腕支持1回ひねり倒立であればディアミドフ(C:I)、リチャード(E:II)、車輪ディアミドフ(D:III)、テン・ハイビン(F:IV)といった具合に技が変わります。
通常は、より上昇力が必要とされる腕支持からの技(グループII)や棒下宙返りからの技(グループIV)の難度が高くなり、支持から行うマクーツ(E:I)は腕支持から行うと最高難度のツォラキディス(G:II)になります。このような技の入り方に注目すれば平行棒をより面白く見られるようになるのではないでしょうか。個人的には平行棒の技グループの関係は非常に興味深いものがあり、いずれ記事にまとめられればと思っています。
この動画を見て思ったんですが、楊威の屈伸ベーレは開きこそありませんが、屈伸姿勢が素晴らしいですね(ほとんどは抱え込み屈伸宙返りに見えるので)
http://www.youtube.com/watch?feature=player_detailpage&v=BC0eCUQbFHs#t=28
チッペルトの実施もこれを見る限り、大分余裕があるので、頑張れば中野とまではいかなくてもそれなりに腰の高い実施もできそうに見えますし。
というかチッペルトって中野のような実施のほうが異端とされてるんでしょうか。
指導者がどう教えているのか気になるところ。
あまり腰の切り返しを重要視していないのか。
http://www.youtube.com/watch?v=n99_iO8_QHU
話がそれましたが、吊り輪もこの実施はかなりいいですね。
今まで見たものは、難度は高いですが、実施があまり良くないものが多かったので。
個人的に楊威は今まであまりぱっとしない選手でしたが、動画を見て認識が変わりました。
チッペルトは中野の実施が間違いなく理想形だと思いますよ。みなああいう実施なんで異端といえば異端かもしれませんが。