Dスコアの算出方法(その2) |
前の記事の続きとして、種目ごとの組合せ加点や制限事項についてまとめたいと思います。主に演技構成やDスコアに関わるものが中心で、全ての禁止事項や減点要素を網羅したものではありません。ゆかと跳馬にあるペナルティはEスコアとは別に減点される要素でND(Neutral Deduction)とも呼ばれ、D審判の管轄となっています。
1. ゆか FX
組合せ加点
宙返り技 + D以上の宙返り技 = 0.1 (逆も可)
D以上の宙返り技 + D以上の宙返り技 = 0.2
・3つの宙返りの連続では、組合せ加点は片側だけに与えられる(2009年から)。
→3連続の宙返りでは真ん中の宙返りは前後どちらかの宙返りとしか組合せ加点が計上されません。D審判により選手に有利になるように選択されます。
・組合せに関わる技はトップ10技あるいは、同一グループ4技以内の中に収まっている必要はない。
→多くの選手がトップ10技以外の技として、前方宙返りひねり(B)やテンポ宙返り(B)を組合せ加点のために取り入れています。
演技構成上の制限
・演技時間は最大70秒。
・フロアエリア全面を使用しなければならない。
→最低1回はABCDの各コーナーに行かなければなりません。
・同じ対角線の使用は直接連続して2回まで(2009年から)。
→「対角線」とは各辺の中間点を結んだ範囲となり、A-Cの対角線であれば右図の範囲となります。
・終末技は両足をそろえた跳躍技であること。
→グループIの技はもちろん、宙返り転のような技で終わることはできません。
・一つの技は1グループ要求のみ満たされる。
→ゆかには終末技のグループ(V)がないため、グループII~IVの技から終末技を行うことになりますが、実施された終末技ではグループII~IVの要求グループを満たすことはできません。例えば、後ろとびひねり前方かかえ込み2回宙返り(D:IV)を終末技とした場合、グループIVの要求を満たすためには別のグループIVの技が必要となります。ただし、終末技に用いた技を含めて同一グループ4技以内の制限が適用されるため、例えば、後方宙返り3回ひねり(D:III)を終末技に用いた場合、グループIIIの技は残り3つしか計上されません(終末技が優先してカウントされます)。
・宙返り転技は1回まで(2013年から。2006-2012年までは2回まで)。
・宙返り転技は他の宙返り技と直接連続できない(2013年から)。
→テンポ宙返り~トーマス(B+D)のような連続技はできなくなりました。
・力技は2回まで。旋回系・ロシアン転向系の技は2回まで(2013年から)。
ペナルティ
・タイムオーバー(2秒まで:0.1、5秒まで:0.3、5秒超:0.5)。
・ラインオーバー(片手/片足:0.1、両手/両足/片手と片足:0.3)。
2. あん馬 PH
演技構成上の制限[1]
・縦向き3/3移動は前移動1回、後ろ移動1回まで(2010年から)。
・ロシアン転向技は終末技を含めて2回まで(2007年から)。
→1ポメル上でコンバインとして実施されるものや、移動を伴う技(ロス、ウ・グォニアンなど)は含みません。
[1] あん馬には倒立技や終末技における移動やひねりに関する特別なルールや、フロップやコンバインに関する特別なルールがありますが、これらについては別に記事を設けたいと思っています。
3. つり輪 SR
演技構成上の制限
・同じ姿勢の力静止技は2回まで。
→振り上がり中水平(E)、伸腕伸身中水平(E)を行ったら、後転中水平(F)は行えません。
・グループIII・IVの技の直接連続は3回まで(2013年から。2009-2012年は4回まで)。連続していないとするためにはB難度以上の振動技が必要。
・グチョギー系、リーニン系の技は2回まで(2013年から)。
4. 跳馬 VT
演技構成上の制限
・種目別予選および決勝では2本の跳越を実施するが、異なったグループで異なった第二局面の技を跳ばなくてはならない。
→ヨー2(I)とリ・シャオペン(IV)はグループは異なりますが、第二局面が同じ(前方伸身5/2宙返り)なので種目別でこの2本を跳ぶことはできません。
ペナルティ
・ラインオーバー(片手/片足:0.1、両手/両足/片手と片足:0.3)。
5. 平行棒 PB
演技構成上の制限
・姿勢の異なる同じ種類の宙返り技は繰り返しとみなされる(2009年から)。
→ベーレ(D)と屈身ベーレ(E)、前方5/4宙返り腕支持(D)と支持(E)など。
6. 鉄棒 HB
組合せ加点
バー上の技 手放し技
D以上 + D以上 = 0.1 (逆も可)
手放し技 手放し技
C + C以上 = 0.1 (逆も可)
D以上 + D以上 = 0.2
・組合せ加点を得るための技はトップ10技に含まれていなければならない。
→ゆかとは異なります。
演技構成上の制限
・片手懸垂の技は2回まで(2010年から)。
・アドラー系の技は2回まで(2013年から)。
・同系のひねり技は2回目から繰り返しとみなされる(2007年から)。
→エンドー1回ひねり片大逆手(C)と大逆手(D)など。